戦略ストーリー
戦略ストーリー1
楠木建(2010):「ストーリーとしての競争戦略」,東洋経済から作成
ストーリーの強さ (因果関係の蓋然性が高い)
マブチモーターの戦略ストーリーを例にとると、「コスト優位」のシュートのため、「大量生産」のパスを考え、これを可能にするためモーターの「標準化」のパスを打ち出す。
そして、「標準化」に持ち込むため、先ず、業界下位メーカーをターゲットに特殊仕様のモーターを納入し、次に低価格の標準モーターに切り替え、顧客にコストメリットと設計上のこだわりの無意味さを実感させるという「二段階作戦」をとる。また、モーターを組み込んだ半製品を制作する「サブ・アセンブラーへ販売」する。サブ・アセンブラーは独立系サプライヤーであり、メーカーごとの特殊仕様にこだわりがないからである。
規模の経済を獲得したマブチモーターは上位メーカーにも標準モーターを納入し、圧倒的なシェアを獲得した。
ストーリーの太さ (構成要素間のつながりの数が多い)
マブチモーターの「標準化」は、受注生産型のモーターと比べ大人数の営業部隊が不要になることから「一極集中の営業体制で全世界に直接販売」とつながり、同じものを繰り返し作ればよいため海外の非熟練労働力を使いやすくなることから「海外直接生産」とつながり、スペックを標準化することで、年間を通じ同じ量を計画的に制作することが可能になることから「平準化生産」とつながる。
ストーリーの長さ (時間軸での拡張性、発展性が高い)
「標準化」「大量生産」「コスト優位」と因果論理が前へ前へとつながっていき、ストーリーに拡張性や発展性があるということ。「それで、どうなるの?」という問いに対して。次々と答えが繰り出される。これがストーリーの長さである。